○ 会長挨拶
 このところ数年、関東都市学会では都市の更新に関する議論が、特にリノベーション概念を中核に据えて展開されて来ました。老朽化した建造物単体の改修(建築学的にいうところのリノベーション)が地区内で連鎖的に展開して、それが既存の中心市街地における新しい形の「リノベーションまちづくり」となっているところが多々あります。学会ではそれら数々の現場にお邪魔して学んで来ました。そして2019年度は、都市の郊外に視点を移し、高度経済成長の象徴としての公団・公社の大規模団地群の老朽化・建て替え(リノベーション)の現場におけるマルチステークホルダーの参画・協働のありかたを検討して来ました。こうした経緯、すなわち、戦災復興から高度経済成長を経て首都圏およびその郊外が整備されてくる過程に、1964年、前回の東京オリンピックは位置付けられるでしょう。それでは今、21世紀の東京におけるオリンピック開催には、いかなる含意・意義があるのでしょうか。関東都市学会が都市の更新を論じる枠組みでオリンピックを議論するお膳立ては出揃ってきたと言えるでしょう。学会独自の視角で、果敢な議論の展開が望まれるところです。

 ところが…。恐らくこのことを最初に記さなければならなかったのかもしれません。これを記している2020年度初頭、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行を受けて、政府は改正新型インフルエンザ対策特別措置法(通称:新型コロナ特措法)に基づき緊急事態宣言を発しました。年度当初の対象は東京など七都府県で、「都市封鎖(ロックダウン)」、「三蜜(密閉・密集、密接)」、「外出自粛要請」、「医療崩壊」、「ステイホーム」など、目新しい言葉の数々が連日連呼されています。
本学会でも2019年度末以降、学会活動、例えば2020年3月の研究例会や理事会・各委員会を中止とせざるを得なくなりました。また、今年度5月に開催が予定されていた春季大会は「都市の更新:オリンピック開催を契機として(案)」をテーマに据えて開催されることが学会ニュースで告知されていたのですが、残念ながらこれも中止とせざるを得なくなりました。多くの他学会等では、オンライン会議(WEB会議)で事業継続をはかり始めています。この世界的惨禍に学会としてどう対峙しうるのか、そしてこれを都市学の枠組みにおいてどう論じていくことができるのか、これからの一大テーマとなることと思います。

 関東都市学会は都市を多角的に学際的に論じる場です。建築学・都市計画学、法律学、政治学・行政学、経済学・財政学、地理学、歴史学・考古学、社会学、人類学・民俗学、観光学さらには文学など…、多くの分野にまたがって議論が展開されます。そこには研究者・教員だけでなく、行政職員や各界の実務家、NPO・NGOなどの活動者など、多彩な人々が参画しています。学会大会では研究発表に加えて、開催地の市役所などの協力を得て現地視察、まちあるきなどが組み込まれていて、こうした様々な方々の研究活動、実践活動の場を訪れます。これらは研究活動委員会が数年のスパンで企画構想しているものです。今回の都市更新研究(既存市街地、郊外のリノベーションまちづくり)にオリンピックが位置づけられて、数年度にわたって議論が重ねられてきているのはそうした文脈です。
 学会「大会」での研究報告の場に加えて、本学会には年に数回の研究「例会」が設定されています。上述の研究活動委員会では、研究課題を緩やかに構想・シフトさせながら、当該領域に関心を抱く若手研究者との出会いの場を醸成して、研究例会等での報告登壇の場を数々に設定しています。例会・大会で報告すると、学会誌『関東都市学会年報』(査読誌)へ投稿することができます。学会誌は学会誌編集委員会によって編まれ、投稿論文の査読体制が整えられています。編集委員会は研究活動委員会と協働して学会での諸議論の成果を刊行しています。
 また、関東都市学会は独立した学会として日本学術会議の協力学術研究団体の指定を受けていて、同様に協力学術研究団体である日本都市学会の関東支部という二つの顔を持っていることから、関東都市学会の学会員になると、自動的に、日本都市学会員としても位置付けられ、『日本都市学会年報』(査読誌)への投稿資格を得ることとなります。
 関東都市学会は都市を学際的・総合的に研究したいという個人、団体に広く門戸を開いております。皆様の積極果敢な参画をお待ちしております。

2020年4月
関東都市学会会長・専修大学人間科学部教授
大矢根淳